24歳、恋愛処女
しばらくたってやってきたのは、若い男と南谷さん。
若い男の方は眼鏡に見覚えがあるから、いつもの歯科医かな。

「院長の南谷です」

「院長?」

思わず素っ頓狂な声を出してしまった私に、南谷さんはいつもみたいににやりと笑った。
いや、ここに勤めてるっていうのは知ってたけど、まさか院長だったとは。

「このたびは二村様には大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした」

「はい?」

改まられた上に深々とふたりにあたまを下げられ、ますますもってわけがわからないんだけど。

「きちんとご説明、いたします」

その後、歯科医……荻原先生の説明によると。
同じ日に型を取ったもうひとりの方と書類を書き間違え、銀歯を取り違えてしまったらしい。
そして、その方も今日、治療に来てて銀歯がはまらないことから、取り違えが発覚。
黙ってれば私にはわからないことなのに、ここの歯医者は丁寧に謝る口らしい。
いや、南谷さんの性格からいくと、そうなんだろうけど。
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