24歳、恋愛処女
ばくん、大きく鼓動した心臓。

「なにもされてないよ。
キス以上はしないって約束でしょ?」

ずきずき、ずきずき、痛み続ける胸。

「……ならいいけど」

俯いて黙ってしまった私に、目的地に着くまで理央もずっと黙ってた。

 
理央が私を連れてきたのは、横浜の中華街だった。
車を降りると、さっきまでの気まずい空気を誤魔化すようにはしゃいでみせる。

「なに、食べるの?
満願全席?」

「おまえは俺を破産させる気かよ」

にやりと意地悪く笑うと、理央は私の腕を取って歩き出した。
車内のことは気にしてないのか、……それとも忘れたフリなのかはわからないが、表面上は普通のようでほっとした。

 
理央のお勧めのお店でもちろん中華。
あれもこれもってふたりで食べきれないくらい頼む理央に、おかしくて笑いが漏れる。
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