24歳、恋愛処女
「申し訳ない。
彩夏ちゃんには迷惑かけて」

恐縮しきって深々とあたまを下げられても、どうしていいのかわからない。
ほんと、隠してればわかんないことだし。

「別にいいですよ。
南谷さんにはお世話になってるし」

「ほんとに申し訳ない。
こいつも十分反省しているし、許してやってくれると嬉しい」

いつもの嘘くさい笑顔が消えた荻原先生は蒼い顔で恐縮しきってる……というよりはなんだか目が泳いで完全に怯えているけど、なにがあった?

「いいですよ。
私も失敗して、よく松本課長に迷惑かけてますし」

「ありがとう、彩夏ちゃん」

「……ありがとうございます」

あたまを下げた荻原先生がやっと、ほっと息を吐いたけれど……。
なにかよっぽど怖い思い、したんですね。
ヘビークレーマーな患者にでも当たったのかな?
 

もう一度、型を取って銀歯を作ることになって、診察室に移動する。
型を取って、口をゆすいで、今日はおしまい。

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