24歳、恋愛処女
「レントゲンを撮った結果ですが。
やはりかなり深いので、神経を抜いて根管治療しないとだめですね」

目の前の大画面にさっき撮ったレントゲンが映し出されて、丁寧に説明してくれた。
穏やかに笑ってるのは落ち着くし、好感が持てる。
治療方針があらかた決まり、また椅子を倒された。

「痛かったら云ってください」

開けた口に器具をつっこまれたけれど。
こんな状態で云えって云われたって云えないんですが。
しかも、痛いし!
痛いったら!
涙目で睨みつけたら、歯科医が手を止めた。

「痛いですか?」

淡々とそんなことを云ってのける歯科医に、激しくうんうんと頷いた。
結局、麻酔をさらに追加してくれて治療再開。

……前言撤回。
この先生、嘘笑顔がやだ。
人が痛いって云ってるのにぜんぜん気に止めてないから、あの顔は絶対、嘘笑顔だし。
さっきの説明も、丁寧っていうより、ただ仕事だから事務的にやってるだけだ。

あー、無理だったかもしれないけど、南谷さん指名すればよかった……。
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