24歳、恋愛処女
「……はい」

熱い顔で、消え入りそうな小さな声で返事をした私に、荻原さんは満足そうに笑って頷いた。

「そっか。
彩夏の初めて、ひとつ僕がもらったね」

上機嫌の荻原さんに手を引かれて歩く。

なんだかいちいち恥ずかしい。

お店に着いてやっと手が離れて、ほっとため息。
いつものように飲み物とその店のお勧めなど適当に頼んだ。
ワインを飲みながら、荻原さんをちらり。
私を見つめる視線が、いつもと違ってる。

「荻原さん、その、今日」

「ああ。
彩夏に嫌われたくなくていままでは紳士的に振る舞ってたけど、条件付きとはいえ付き合うようになったからね」

にっこりと笑うその顔に、いままではずいぶん感情を隠してたんだと知った。

「それから。
その“荻原さん”ってやめてもらえないかな」

「え?」
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