24歳、恋愛処女
「……はい」

そういえばこのあいだも、そんな話をしていた。
理央さんにとって、私はその程度の存在なのかな……。

「彩夏」

いつものようにタクシーを拾ってくれて、別れ際。
私の唇にふれる、真人さんの柔らかいそれ。

「……!」

「初めてのキスが理央だなんて腹が立つけど。
まあ、こんなのは挨拶も同じだからね」

平気でそんなことを云う、真人さんの顔を見れない。
結局、顔をあげられないままタクシーは走り出す。

……はぁーっ。
なんか今日、疲れた。

ぐったりと窓の外を見ていると、ピコンと携帯が通知音を鳴らした。

“今日も楽しかった。
次の初デート、楽しみにしている。
おやすみ、僕の彩夏。
愛してるよ”
 
ばふっ、どこかでそんな音がして、へなへなとシートに崩れていく。
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