24歳、恋愛処女
「いえ。
真人さんが謝ることじゃないので」

悪いのは理央さんで、真人さんじゃない。
それに見張ってたのはどうかと思うけど、助けてくれたし。

「嫌ならはっきり云っていいから。
むしろ理央とは二度と、ふたりで会わない方がいい」

「……そうですね」

最初っから関心がないのなら、あんなことはしないで欲しかった。
恋愛経験ゼロの私は、好きでもない人とキスができるなんてわからなくて。

「彩夏が落ち込むことじゃないから」

真人さんの右手が伸びてくる。
優しいその手は私が泣きやむまで、そっと髪を撫でていてくれた。

 
家の前で真人さんは車を停めてくれた。
降りると、ちょいちょいと手招きする。
近づくと、ちゅっと唇がふれた。

「おやすみ、僕の愛しい彩夏」

「……おやすみなさい」

走り去る車をぼーっと見送る。
ふらふらと家に入ると、まだ起きていた母から不審そうな顔で見られた。
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