リミット・デイズ
「すず、ここ座れよ」
りっちゃんにそう促されて、壊れたお賽銭箱の前の低い階段に、手を繋いだままで腰をかけた。
りっちゃんが隣に座ると思って左に寄ってみたけれど、階段には座らず、ただ突っ立って俯いたまま繋いだ手を離さん。
「りっちゃん、どないしたの?具合でも悪いん?」
なんだか様子の違うりっちゃんが心配になって、見上げるように顔を覗き込む。
するとりっちゃんは静かに首を横に振って、どこか悲しそうな目で言った。
「すず、俺さ。
卒業したらアメリカ行くわ」
────え……………?
「実家に遊びに行くっちゅうこと?」
「うんにゃ。向こうに住む」
「住む…………??」
言葉の意味が上手く頭に入らなくて首を傾げる。
「うちの親、別れるからさ」
「え……………」
「俺も母さんも、もう限界ばい」
そう苦笑いして、りっちゃんはやっと私の隣にゆっくりと座った。
繋いだままの手に、じんわりと汗が滲むのは、
りっちゃんの汗か、すずの汗か。