リミット・デイズ
─────りっちゃんの家庭事情は、すずもよく知っちょるつもり。
りっちゃんのホントのお父さんは、りっちゃんが小さい頃に事故で亡くなった。
そのことでバーバラさんは精神的に参ってしもうて、小さい頃に旅行に来たことのある、ここ佐賀にりっちゃんと二人で越してきた。
もともと日本好きなバーバラさんやけど、やっぱりこっちでの習慣には慣れなくて、最初の頃は色々大変だったみたい。
そんな時に色々力になってくれたのが、隣町に住んでいた修二さん。
今のりっちゃんのお父さん。
どうゆう経緯で二人が知り合ったのかまでは知らんけど、
バーバラさんと修二さんはお互いに惹かれあって籍を入れ、五年前からあの家でりっちゃんと三人一緒に暮らしとる。
だけど上手くいっていたのは最初の一年だけで。
りっちゃん曰く、
「酒が入るとあいつは人が可笑しゅうなる。昼間っから飲み歩いて、たまに帰って来たと思えば酔っ払って暴力ばっか振るう」らしい。
修二さんは務めていた会社をリストラされ、再就職が上手くいかのうて、すっかりお酒に呑まれてしまったらしい。
バーバラさんが病院で先生をしているから、家計はあまり苦しくないらしいけど、その分バーバラさんは忙しゅうて、そんなに家におられん。
だけん、りっちゃんはいつもあの家に一人になってしまっちょる。
すずがりっちゃんと寄り道して帰りが遅くなってもうちの親が何も言わへんのは、そういう理由もあるんやと思う。
りっちゃんは、自分の家が嫌いやった。