リミット・デイズ
「母さんおる時は暴力振るわんけど、ずっと怒鳴っとる。母さんだってあんな気の休まらない家に帰るのは、苦痛やったんやろな」
当然やろな、とりっちゃんはどこか寂しげに笑う。
そんだけ上手くいっちょらんなら、離婚になるのも頷けるけんど……。
「修二さんは、了承したと?」
修二さんはバーバラさんの収入ばなかと生活していかれん。
そんな簡単に別れさせてもらえるやろか?
「しちょらんし、言っちょらん。俺が卒業すっときに言うてやろう思っちょる。いざとなったら母さんと二人で逃げるつもりばい」
「逃げる…………」
「だけん、これはまだ母さんと俺の秘密の計画ばい。他言無用やで?」
「───そがいな大事なこと、すずに話してもよかとの?」
「すずだから話したんや」
繋いだ手から、りっちゃんの温かい体温が伝わってくる。
一層ぎゅっと強く、名残惜しそうにすずの手を包み込んだ。