リミット・デイズ
「すず、あと何分?」
「21分」
「余裕ばい」
自分を腕時計を付けちょるに、わざわざすずに時間を聞く。
それも、いつものこと。
りっちゃんは玄関の鍵を閉めると、すずの少し前を歩き出す。
そんで────、
「ほら、すず」
そう短く言って、すずに手の平を差し出す。
すずはそのごつごつした少し大きな手を、ぎゅっと掴んだ。
学校の友達や他の人から見たら、「付きおうちょるの?」と言われよるけど、別にそうやない。
すずたちにとっては日常。もう今では当たり前。
りっちゃん こと、藤代李仁(フジシロ リヒト)は、私 村橋 涼花(ムラハシ スズカ)の幼なじみ。
りっちゃんがアメリカから、ここ佐賀に越して来てからの10年間。
家が隣どうしってこともあって、家族ぐるみで親しかった。
すずたちは、いつも一緒やった。