リミット・デイズ
「なぁすず」
りっちゃんは唐突に立ち止まって、すずの顔を覗き込むようにして言った。
出逢った頃はすずより小さかったりっちゃん。小学校でも女の子みたいのうてバカにされちょった癖に。
今ではもうぐんぐん追い越されちょる。すっかり男の子ばい。
「なん?」
「学校終わったら、ちょっとええ?すずに話があるけん」
「話?」
「大事な話や」
すずがコクンと頷くと、りっちゃんはまたすずの手を引いて歩き出した。
学校のすぐ近くまで来て、同じ学校の人がどっさいおる中でも、りっちゃんは手を離さん。
じろじろ見られちょるし、コソコソ言われたりもするけんど、りっちゃんは聞こえへんみたいに颯爽と歩く。
今日からすずたちは中学3年生。
3年はクラス替えがないから、今年もりっちゃんと同じクラス。
だから昇降口で靴を履くと、また手を繋いで一緒に教室まで行く。
帰る時もそう。
他人が聞いたら、可笑しいと笑うかもしれん。
ばってん、これがりっちゃんとすずの当たり前で。今までずっとこうしてきた。
だけんこれからも、ずっとりっちゃんと手を繋いでいくんやと思っちょった。
なのに、
そんなん当たり前やなかった…………………。