黒猫の恋模様
制服に着替えて一階へと降りれば
ダイニングの机には朝食が並べられていた。



「キッチンにあったもの勝手に使っちゃったけどよかった?」



俺が降りてきたことに気付いた詩は
ふわふわした粟色の髪を揺らしながら振り返った。



「いいよ、どうせ使う奴は詩ぐらいだし」



心配そうに確認する詩の頭にポンっと手を置いてから
テーブルに着き、詩の作った朝食を食べる。
いつもと変わらない朝。
きっと遠い未来もこうして詩と朝を迎えるんだろう。
関係は今と変わるだろうけど、
それでも変わらずに隣にいるのだろう。



「ダメだよ、ちゃんと自炊もしなきゃ」



さっきの心配そうな顔とは打って変わった
ふくれっ面でそう言いながら目の前の席に座った詩。
両親は仕事で家を空けがちだが、
それでも俺がこうやって手作りのものを食べれるのは
幼なじみである詩が毎日飯を作りにきてくれているからだ。

朝食もあと一口となった時に
インターフォンの音が鳴り響いた。



「凛(りん)だろーし、鍵開けてやって」



残り一口を口へ放り込む前に
自身のくせっ毛と格闘していた詩にそう言い、
玄関へと駆けて行く彼女を見送りながら
最後のスクランブルエッグを口へ放り込んだ。

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