黒猫の恋模様
俺の家から高校までは徒歩5分程。
近いからこの高校を選んだと言っても過言ではない。



「栄人くんおはよ〜!!」

「はよ、栄ちゃん!!」



そう言って追い抜いて行くクラスメイト達が
詩に声をかけることは滅多にない。
というのも



「栄はよ!!
詩ちゃんもはよ!!」

「…おはよ」



いつも声をかけてくれる俺の友人にでさえ
人より数倍の人見知りを発揮するからである。
詩のことが嫌いだとか、苦手だとかではなく
気を使ってくれているらしい。



「相変わらず人見知りだな〜」



中にはこうやって打ち解けようと話しかけてくる
フレンドリーな奴もいるが、珍しいタイプだ。

ちなみに、話しかけられている詩といえば
俺の背中に隠れて一向に出てこようとしない。



「詩ビビってんだろーが。ほら、行った行った」



そう言えばチェっと言いながらも「また後でな」と言い
走り去って行くので悪いやつではないのだ。



「詩もいつまでしがみついてんの」

「…学校嫌い」



人見知りな詩には友人と呼べる存在が俺と凛しかいない。
まあ他にも色々と事情があるのだが、
少なくともこれでも昔よりはずっと明るくなったのだ。



「それでもちゃんと来てんじゃん」



そう言って頭を撫でればプイッと顔を逸らした詩を
微笑ましい気持ちで見ながら校門をくぐれば、
やけに騒がしいことに気が付いた。
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