黒猫の恋模様
騒がしい校門を通り抜け、なんとか教室までたどり着く。
そして、昨日までなかった位置に設置されている机を見て確信した。



「転校生が来るみたいだな、詩」



横で不機嫌そうな顔をしている詩も気付いているようだ。
何しろ校門から教室に来るまでに何度も
「転校生」という言葉が聞こえて来たのだ。
しかも、増えている机は詩の席の後ろで気付かない方が無茶なのだ。



「私、関係ないから」



早くも関わりたくないというオーラを出している詩に
デコピンを軽くかまして、席へ連れて行く。
相変わらずふくれっ面な詩をからかいながら、
家で爆睡していた凛は遅刻せずに来られるのだろうかと
少し心配しながら過ごしていれば



「はーい、席ついて〜」



ショートホームルームのチャイムがなるよりも前に
担任の前川(まえかわ)先生、通称前ちゃんが教室に入って来た。
しかし、俺は前ちゃんが早く来たことよりも
転校生が見知った顔だったことに驚きを隠せなかった。



「転校生の西嶋あかりです。
この街に来るのは二度目ですが、よろしくお願いします!!」




平穏だった生活が終わる音がゆっくりと、確かに、聞こえてきた。
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