黒猫の恋模様
♯不穏な影
彼女の自己紹介を聞くのは二度目だ。
軽く他にも紹介しているようだが頭には入らず、
横の席で固まっている詩を呆然と見つめていた。



「あれ、前ちゃんこれ遅刻?」



そんな時にふと耳に入ってきたのは凛の間抜けた声だった。
その声にハッと顔を上げた詩は
泣きそうな、何かを我慢しているような顔つきだった。



「ギリギリセーフだけど、気を付けてね?
あと、前ちゃんじゃなくて前川先生ね。
そうそう、新名くん、この子は転校生の西嶋あかりさん。
仲良くしてあげてね」



前ちゃんの言葉で西嶋がいることに初めて気付いた様子の凛は
急に心配そうな顔つきになり、詩を見つめていた。



「え、新名くん!?
覚えてる?久しぶり!!」



教室に響いた西嶋の声から逃げるように
詩は凛の隣を走り抜けて、教室から出て行ったのだった。
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