空に咲く花とキミを
「わぁ、ありがとうございます!じゃあ何か唄おっかな〜。」

あたしは一郎パパの好意に甘えて、デンモクを受け取った。

このスナックは、珍しくカラオケがタダなのだ。

「…。」

直くんまだ話し続けてるよ…内容は、どうせいつもの本当かどうか怪しい武勇伝や自慢話に決まってるんだから、さっさと終わらせればいいのに、絶対あの2人の時間のジャマしてるよ。

あたしのことも放ったらかしだし…まぁあたしは放ったらかしでもいいけど。

心の中で悪態をついてから、選んだ曲を機械に送信した。

直くんは、自分の都合で人を振り回すのはやめた方がいい、と言っていた江藤くんの言葉を、もう忘れてしまったようだ。

そもそも直くんの場合は、心の中に留まっていたのかもわからないけど。

そしてあたしも、直くんのことなんかお構いなしにカラオケを楽しんでいたその時、


「アンタにあたしの何がわかるのよ…⁈」

間奏に入ったところで、叫びにも似た声が耳を劈(つんざ)いた。
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