アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
 街娘が好んで着る様な流行りのローブやドレスなどではなく、動きやすさを重視したまるで少年の様な見た目の服装だ。それでもそれなりに可愛らしく着こなすのがスズランの才能と言った所か。

「……お前さ、もう少し女らしいの持ってねえの? せっかく二人で街に…」

「いいの! わたしあんまりひらひらしてるの好きじゃないんだもん…。きっと似合わないし」

「はは、確かにな! スズがふりふりのやつ着てたらぜってぇ笑う」

「むぅ、、そこまで言わなくてもいいのに!」

「怒るなよ、自分で言ったくせに」

「もー! この話はおしまい!」

 分かっていても他者に肯定されるのは何となく面白くないものだ。

「はいはい……まあ、何着ても似合うんじゃね?」

「え? 何か言った?」

「いや。なんでもねーよ、ほらもう行くぞ!」

「はぁい」

 機嫌が良さそうな足取りのセィシェルに続きスズランも久しぶりの外出に心を踊らせる。ここ最近の浮かない気分を発散する事が出来そうだ。


 *   *   *


 見事な秋晴れの空の下。
 シュサイラスア城下の商店街は行き交う民たちで活気に溢れ、目抜き通り突き当たりの噴水広場には人々が憩いを求め集まる。
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