アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「あ? 果実茶なんて飲まねえよ」
「甘いのは苦手? じゃあ濃いめの珈琲にする~?」
「何も要らねえから…! つーか勝手に腕組むな!! スズ、何かあったらすぐ呼べよ?」
こちらを気にしながら引っ張られて店内に入っていくセィシェルをにこにこしながら見送った。本人はあまり気づいていないがセィシェルは年上の女性に人気がある。酒場でも何人かセィシェルに接近しては可愛がる様に構う女性客が多い。その都度嫌そうな態度を取るのだが。
待っている間、店先の鉢植えの花を眺めていた。ふとその中の一つだけある珍しい花に目が止まる。
「あ、このお花! 前にフィオルさんがくれたのと同じ…。たしか、君影草だったかな」
身を守る様に大きな葉を伸ばし、そよ風に揺られれば今にも美しい音が鳴りそうな小さな鐘状の花を数個つけている。
「小さな鈴みたいでかわいい!」
君影草の鉢植えを手に取ろうとした瞬間何者かの手がスズランの肩に置かれた。
「オイ、お前…」
見知らぬ男の低い声に背筋がぞくりと強ばった。もう一人、違う男の興奮気味な声も聞こえてくる。
「兄貴っ! この女絶対にそうですぜ? 何せこの髪色! こりゃあ移民に違いねぇッスよ!」
「甘いのは苦手? じゃあ濃いめの珈琲にする~?」
「何も要らねえから…! つーか勝手に腕組むな!! スズ、何かあったらすぐ呼べよ?」
こちらを気にしながら引っ張られて店内に入っていくセィシェルをにこにこしながら見送った。本人はあまり気づいていないがセィシェルは年上の女性に人気がある。酒場でも何人かセィシェルに接近しては可愛がる様に構う女性客が多い。その都度嫌そうな態度を取るのだが。
待っている間、店先の鉢植えの花を眺めていた。ふとその中の一つだけある珍しい花に目が止まる。
「あ、このお花! 前にフィオルさんがくれたのと同じ…。たしか、君影草だったかな」
身を守る様に大きな葉を伸ばし、そよ風に揺られれば今にも美しい音が鳴りそうな小さな鐘状の花を数個つけている。
「小さな鈴みたいでかわいい!」
君影草の鉢植えを手に取ろうとした瞬間何者かの手がスズランの肩に置かれた。
「オイ、お前…」
見知らぬ男の低い声に背筋がぞくりと強ばった。もう一人、違う男の興奮気味な声も聞こえてくる。
「兄貴っ! この女絶対にそうですぜ? 何せこの髪色! こりゃあ移民に違いねぇッスよ!」