アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「何が大丈夫だ!! 何故こんな所に一人で居る? あいつはどうしたんだよ、セィシェルは…! あいつと一緒じゃあないのか?」

 先ずは助けて貰ったお礼を、と思っていたのに何故か急激に怒り始めたライアの言葉に掻き消されてしまった。

「……セィシェルとは、一緒に食材の買い出しに来てたんだけど。あの、はぐれちゃって」

「迷子かよ。これだから子供(ガキ)は」

 ライアから見れば確かにまだまだ子供かもしれないが、それはもう仕方の無い事だ。だが好んでそうしている訳でもなければ、迷子になった訳でもない。ライアの一方的な口調にむっとなる。

「あいつ。普段から異常なほどお前に過保護な癖に、こんな肝心な時に守ってやれないなんて馬鹿じゃあないのか?」

「セィシェルは馬鹿じゃないもん! わたしが勝手な行動とったのが悪いんだもの…」

 セィシェルの所為では無い。言い返すものの自らの行動を省みて今度は悲しくなった。
 互いに口を噤み、暫くの間その場に静寂が訪れる。

「……」

 その静寂を一人の男が打ち破った。

「あ! いたいた、探したんだぜー? 表で待ってるとか言ってた癖に居ないし、代わりに柄の悪い二人組は居るしで…って誰!? その女の子!!」
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