アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
 だが裏腹に口を開けば辛辣な言葉ばかりをスズランによこす。まさに売り言葉に買い言葉。咄嗟に思ってもいない事を口にしてしまう。

「べ 、べつにっ!! さっきはライアに助けてもらったけど、わたしが頼んだ訳じゃないもの! それに次からは自分で何とかするし、わたしには構わないで!!」

 口にしてから後悔しても遅いと分かっていたのにそう言い返してしまった。案の定呆れた顔のライアに嫌味を返される。

「俺だって助けたくて助けた訳じゃあない、お前が鈍臭いからだろ?」

「…っなによ、鈍臭いって! さっきからずーっと子供扱いばっかりして、失礼だわ!」

 あまりの言い様に地面を踏み抜きたくなるのを堪えた。子供扱いされるととても悲しくなる。そんな事言われなくても自分が一番分かっているのだ。しかし一度言い返してしまったのでもう後には引けない。

子供(ガキ)子供(ガキ)と言って何が悪い? お前こそ助けてもらっておいて、礼の一つも言えないのかよ!」

 礼……。助けてもらった直後に礼を口にしかけたがライアの言葉でかき消されてしまったままだった。そして今もまたその機会を失ってしまった事に気づく。助けてもらった事に対して感謝の気持ちはあるのに。
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