アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~

「そんな、わたし…」

　ライアへの想いは秘め事だというのに、傍から見て分かってしまうものなのかと狼狽えてしまう。八百屋の店主は既に酔いが回っているのか更に舌を転がす。

「ふふふ、若いっていいねぇ！　所でお相手は誰なんだい？　やっぱりあの番犬君？　それとも花屋んとこの若いのかなぁ？　おじさんにだけこ～っそり…」

「は～い、そこのお野菜のおじさまぁ？　それ以上はセクハラで出禁になっちゃいますよ〜？」

　スズランの後ろからソニャがにっこりとした笑顔を浮かべて登場した。

「ソニャちゃん！」

「それは勘弁してくれよ。ソニャちゃん〜」

「ではあちらのお席で大人し～くお食事楽しんで下さいね？」

「も、もちろんだよぉ！　相変わらずソニャちゃんはおっかないなぁ」

　ソニャにやんわりと指摘され、八百屋の店主はそそくさと常連仲間の待つ席へと戻っていった。

「もう、スズったら！　大丈夫？」

「ありがとうソニャちゃん」

「八百屋のおやじったら酔うといっつもああなんだから！　スズももっと上手くあしらわなきゃあ駄目だぞ？」

「うん…。もっとちゃんとお仕事頑張らなきゃね」

　スズランは周りに心配かけまいと笑顔を作って見せた。