アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
 もうだいぶ前から気づいていた。エリィのライアを見る眼差しは見るからに恋をしている輝きを放っていたのだから。
 しかしスズランは自分の気持を隠したままエリィに接すると決め込んだ。

「注文ですか?」

「あ、そうね。先ずは注文をお願いするわね。……何時もの葡萄酒を(ボトル)で! ええっと、それじゃあお料理は……野菜と魚介のオイル煮込み(アヒージョ)と本日のおすすめの冷製スープ(ガスパチョ)、あと雑炊(リゾット)に、この新しく品書きに追加されてる(きのこ)燻製(くんせい)ハムのコロケッタス! 新商品は食べてみなくちゃあね。あとは……あとはライアがよく食べていた野菜たっぷりのオムレツを…」

 相変わらずの注文っぷりに圧倒されるも、最後の品を切なそうに注文するエリィにスズランも釣られて眉を下げた。

「……畏まりました。小皿料理(タパス)は何にしましょうか?」

「おまかせするわ。……ねえ、スズランちゃん。最近ライアの姿を見かけないのだけど、何か知らない?」

「え、あの…。わたしは何も…」

「……そう、よね…。でもあの人、ずっと貴女の事を気にしていたから貴女なら何か知ってると思ったのよ…」
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