アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「たれ目の癖にち〜っとも優しくないし、超口の悪い残念な男の話。そもそもアタシは年上が好みだからあんたは眼中にないけどね!」

「へっ、よく分からねえけど俺だって夢見がちな女は願い下げだかんな!」

「なにをぅ?」

 今にも言い争いを始めそうな二人。

「本当の事だろ? 跳ねっ返りの癖に」

「はああ?! 乙女心も分からないあんたに言われたくないし。ねえ? スズ」

「スズはお前とはちげぇよ」

「えっと、それよりも二人とも…っ」

 二人を止めようとするも急に目の前がぐらぐらと揺れた。突然身体が落ち込んでいく様な目眩にその場から動けなくなる。

(……な、なに…!?)

「まあ、あんたがどんなに頑張っても? アーサ王子みたいな品行方正な大人には絶っ対なれないんだから」

「知らねぇし。そういう奴だって必ず何か欠点とかあんだよ。例えば人に言えない秘密とか、やばい性癖とか…」
 
「はあ? そんなワケないでしょ! あんなに爽やかで完璧な王子、そういないと思うけど? てかあんた、スズの前で変な話しないでよ! …って、ちょっとスズ!?」

 二人の言い争う声が徐々に遠のいてくる。何とか耐えるも足元が覚束無い。

「っ…スズッ!!」
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