アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「……好きに…、なってもいいのかな?」

「いいに決まってるでしょ! 誰かを好きになるってすごく素敵な事なんだよ。スズの心は自由なんだから誰を好きになっても駄目なんて事ないんだから!」

「だ、だって。セィシェルはあの人に近づくなって……それに、どう見てもエリィさんとお似合いだったもん…」

「まあね、でも時と場合によるけど周りはあんまり関係ないよ。どうするか決めるのはあんたなの! それで諦めるかどうかも結局はあんた次第。それにアタシ、二人のこと応援してるんだから」

「ソニャちゃん…」

「しっかし! ホントどうして急に来なくなちゃったんだろね? でももし来たらすぐに知らせるからスズはちゃんと休んでなって」

「うん、そうする……ありがとう」

 セィシェルとソニャにはいつも感謝しかない。そう思い、スズランは無理やりにでも睡眠をとる事にした。


 ライアが酒場(バル)に来なくなってもう二十日余りは過ぎただろうか。エリィも姿を見せなくなり数日経つ。
 もちろん警備員にも出会えない。それでも諦めきれず、時間を縫っては日々森に足を運んでいる。そんな事を続けていれば体調を崩すと分かっていても、どうしてももう一度あの警備員に会いたかった。
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