アーサ王子の君影草② ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~

仮想へ駈け出す



 ───リノ・フェンティスタと謂う、崇高で無垢な箱庭(せかい)

 全てにおいて争いのない完璧な世界。



 そんな世界を創りたかった。

 それがリノ族の理想なのだから。



 一度は創れたと思っていた……。

 否、世界から争いを消し去る。
 それは容易に為せる事柄ではなかった。


 人ひとりを幸福に導くには、その周囲の人も幸福でなければ意味が無い。当然その周囲の人々も幸福で無くてはならない。

 ならばいっそ街全体を幸福に、その街を幸福へと導く為にはその国を、国の全てを幸福で満たすには世界を……。
 全てにおいて、誰もが平穏に過ごせる世界を───。

 だがそんな幸福の連鎖など、そう簡単には起こらない。



 しかし負の連鎖はいとも簡単に、それも些細な事がきっかけで起こるものなのだ。




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