アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「なっ、急に何言ってんだよ!? 俺はそんな事一言も言ってねえだろ!」

 こんなのただの八つ当たりだ。分かってはいるが先日からの蟠りもあり、スズランの口は止まらなかった。

「おんなじだもん! だってセィシェルはいつだってわたしのこと子ども扱いしてばっかり。早く一人前になりたくて頑張ってるつもりだったけど、それを無理してるって言われたらどうしたらいいの? それに、最近セィシェルこそわたしの予定に無理して合わせてるじゃない…!」

 半人前なのは認める。しかしもう少し信頼してくれてもいいのに、と最近思うようになっていた。加えて、最近朝から晩までセィシェルが見張る様に側についているのだ。いくら過保護とは言え、一人の時間はほぼ無しも同然だ。

「それは…っ、違うんだ。いやでも俺はお前の事が心配で…」

「そんなに信頼出来ないならそう言ってよ! それかもうわたしに構わないで!」

「……おい、それ。本気で言ってんのか? 俺の気持ち、知っててそんな事言うのかよ…」

「っ…セィシェルだって、わたしの気持ち知らないのに勝手に決めつけてるもん!」

 色々な想いを飲み込んで、後悔もしながらやっとの事で立っている気分だった。
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