アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「 ? でもそれは十歳までで、その後はいくらお願いしても一緒に眠ってくれなくなっちゃったの…。今はもう平気だけど、当時はすごく悲しかったんだから!」

「ふぅん……じゃあ今、俺とこうしててもスズランは全然平気って訳か…」

 やはりライアもセィシェルに何らかの想いを抱いているのか、何故か対抗している様に感じた。
 それに。ライアと今、この様な状況になっている事については全く平気ではない。
 もうそろそろ心臓が持ちそうにないのだ。

「……へ、平気じゃないよ…っ、だって今すごいドキドキしてるもん。ライアも、、そうなの?」

「俺は! っ…俺だって、すごくドキドキしてるよ」

「……うん、ライアの心臓の音、すごくおっきい…」

「なんだ、バレバレ……かっこ悪」

「そんな事ないよ……わたしだって、もう心臓が破裂しそう…」

「そうなのか…?」

 それを確かめる様にライアの掌がスズランの心臓の上へと乗せられた。触れられた事により、ますます早まる鼓動。

「ひゃ……なにするの!?」

「ん…、本当だ。鼓動が早い……」

 少し低めで心地の良い声が耳を擽る。更にライアのもう片方の手がスズランの胸の膨らみを優しくなぞった。
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