アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「マルティーン帝国!? 何故あの国が…」

「あくまでも可能性が高いってだけでまだ分からないけれども……」

 真剣かつ、難しそうな話をする二人を交互に見つめる。完全に恋人同士にしか見えなかったが、こうしていると共に仕事をこなす協力者的な存在に見えなくもない。
 それにマルティーン帝国と言えば、水と氷の都としてとても有名だ。無論訪れた事はないが、以前ユージーンがリノ・フェンティスタの成立ちを話してくれた事がある。それを薄らと覚えていた。シュサイラスア大国とは良好な同盟関係にあるとも聞いていたが……。

「……マルティーン人が主犯の黒幕なのか?」

「ごめなさいね、そこまではわからなかったわ……でも。隠れ屋として拠点にしてるおおよその場所は掴めたの! おそらくその場所に今までに攫われた子たちも囚われてる筈よ…!」

「本当か? 何処なんだ!?」

 何やら明るい話ではないどころか、内容はかなり重要かつ機密な情報ではないのかとスズランは緊張した面持ちなる。

「ちょっと…、まって頂戴。その前に貴方にはやる事があるでしょう? ……ほら、スズランちゃんにこんな心配そうな顔させたらダメじゃあないのよ」

「…っ…! ……でも」
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