アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「───ヴァレンシアには昔から世話になってるんだ」

 ライアはそう言いながらゆっくりと歩き出すと繋いでいた手の指の間に指を通し、強くしっかりと握り直した。そうされると先ほど互いの想いを確かめ合った時の口づけを思い出してしまう。この手を、この温もりを離したくない。
 スズランは負けじと手に力を込めた。

「あのっ、ライア!」

「ん? ……どうした?」

「前に、街で助けてくれた時あるでしょ? あの時にライアはこの国の国王様の為にいろいろ情報を集めるのがお仕事って言ってたけど、、その。それは危険なお仕事なの…?」

「何? それって俺の事、心配してくれてるとか?」

「……心配、しちゃダメ? わたしだってライアの事心配だもん……」

「…っ…!」

 ヴァレンシアに対して向こうを張る訳ではないが、ライアが危険な事に立ち向かっているのならば純粋に心配なのだ。スズランが心配げに顔を覗き込むとライアは急に立ち止まり掌で口元を覆った。
 
「ライア? ……どうしたの?」

「っ…ありがとう……めちゃくちゃ嬉しい」

 ライアは小声でそう言うと、伏し目がちで困った様にはにかんだ。

「ライア?」
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