アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「では、貴女はこの国の王子であるライアの身に何かあればその責任を負えるのですか?」

「それは…」

 怒り。いや、ハリの瞳には憎悪の様な強い思念が込められている。そう感じた。
 ハリの物言いにセィシェルが言い返す。

「おいあんた。さっきから聞いてれば何なんだよ! 重荷とか関わりを絶てだとか! 責任も何もあいつの方がスズの周りをうろついてんだ…っ何も知らねぇ癖に勝手な事言うな!!」

「やめなさいセィシェル…! ハリ殿、と言いましたか。度々うちの者が申し訳ありません。ですが、今回の件については此方も被害を受けております。増して、誘拐犯から狙われているのはこのスズだと聞きました。ですから彼女一人に責任を問うのは些か不条理でありましょう。うちの者が侵した無礼に置きましては全てこの私めに責任を。どうか…」

 ユージーンも何時に無く低い声のまま言葉を並べる。二人ともスズランを擁護する為の発言なのは明確だ。ハリはそんな二人を一瞥した後、苦々しく笑みを浮かべた。

「……良かったですね…。貴女はここでもこうして守ってもらえて。流石は〝あの一族〟…、人を虜にする処世術に長けている。そうやって今までに何人を虜にしてきたのです?」
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