アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
セィシェルはそれ以上何も言わずに大きめの毛布でスズランを包むと半乾きの髪を乾かし始めた。掌からそよぐ爽やかな微風が髪に残る湿り気を散らす。セィシェルの指が優しく髪の中を滑る度に申し訳ない気持ちで一杯になる。
慣れた手つきで髪を梳きながらセィシェルが呟いた。
「……少し前にジュリアンて人が警備隊を連れて出発したぞ。あのハリって奴は残ってなんか親父と話し込んでるみたいだし…」
「……」
「飯、ここに置いとくから食える時に食っとけよ? んで、食ったら寝ろ。あと何かあったら絶対呼べよ。俺、下の部屋に居るから」
そう言うセィシェルの声にも覇気がない。何とか感謝を伝えるべく枕から顔をあげて声を絞り出す。
「ありがとう…。ごめんなさい」
「っ…どうしてスズが謝るんだよ!」
「マスターにも、謝らなきゃ…」
「まあ、とにかくスズは部屋で大人しくしてろってさ。それにしても、なんでスズがこんな目合うんだよ。誰がこんな……本当にあいつ、これで無事に戻らなかったらただじゃあ置かねぇからな!」
こんな時でもライアに対して変わらず悪態をつくセィシェルに不思議と安心していた。
「うん……みんなが、無事で戻りますように」
慣れた手つきで髪を梳きながらセィシェルが呟いた。
「……少し前にジュリアンて人が警備隊を連れて出発したぞ。あのハリって奴は残ってなんか親父と話し込んでるみたいだし…」
「……」
「飯、ここに置いとくから食える時に食っとけよ? んで、食ったら寝ろ。あと何かあったら絶対呼べよ。俺、下の部屋に居るから」
そう言うセィシェルの声にも覇気がない。何とか感謝を伝えるべく枕から顔をあげて声を絞り出す。
「ありがとう…。ごめんなさい」
「っ…どうしてスズが謝るんだよ!」
「マスターにも、謝らなきゃ…」
「まあ、とにかくスズは部屋で大人しくしてろってさ。それにしても、なんでスズがこんな目合うんだよ。誰がこんな……本当にあいつ、これで無事に戻らなかったらただじゃあ置かねぇからな!」
こんな時でもライアに対して変わらず悪態をつくセィシェルに不思議と安心していた。
「うん……みんなが、無事で戻りますように」