アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
 互いの力を駆使し、支え合える存在なら良かった。そう、なりたかった。しかしライアは何時だって、何に対しても骨身を削り自己犠牲を貫くのだ。その信条が悪い訳ではないが、あまりにも過ぎれば身を滅ぼしかねない。

「ねえ、ライア。どうして一言も相談してくれなかったの? なんで勝手に決めて、自分を犠牲にしようとしたの?」

「そうするしか、ないと思ったから。……俺は守りたかったんだ。君と、君のいるこの世界(リノ・フェンティスタ)を。でも、現に犠牲になったのはスズラン、君の方じゃあないか!」

「……わたしはいいの。この〝思い出(たからもの)〟があればひとりでも平気。だからもうわたしの事は放っておいて」

「そんなの駄目だ!」

「だってわたし、、もうここしか居場所がないもの」

「そんな事絶対にない! 俺がずっと傍にいる、今度こそ俺がスズランの居場所になるから!!」

「駄目。それが一番駄目なの…。ライア……もうわたしに会いに来ないで」

「何を言って…」

 多忙な中、合間を縫って一緒に過ごす時間を大切にしてくれていた事は知っていた。それが突然避けられるようになり、全く会えなくなってしまった理由も。
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