つよい魔王とよわい勇者
魔王の最期
アーシュはレイアの近くへ飛び降りた。
レイアの体にはたくさんの呪文が巻きついていた。
「呪いを受けてたのか?」
「勇者だからね…」
レイアは力なく微笑む。
いつまでたっても魔王を倒さない勇者に
痺れを切らした、勇者の次の存在…大魔法使いはレイアの体に呪いをかけていた。
月の出ない夜に、灰となり消えてしまう呪いを。
「私ね、消えちゃうの。
でも、あなたに会えてよかった。
最後に、名前、呼んでくれる?」
レイアは微笑む。
「レイア!…ありがとう。
また会おう。次は敵同士ではなく、
仲間として。またな、レイア。」
幸せそうに微笑んだレイアは
灰となり、
風に乗って消えていった。
足元に少しだけ残った灰を
アーシュは抱きしめた。
ああ、こんなにも悲しくなるなんて。
そして、この瞬間になってやっと気づくなんて。
レイアを愛していたことを…
アーシュはそっと涙を流した。