つよい魔王とよわい勇者
力を持たない人間でさえ、
我を殺すことができたのだ。
なぜレイアには我を殺すことができなかったのだ。
魔王は勇者に倒される運命ではなかったのか。
まぁ、良い。
こんな風に人間どもに殺される日があっても…
でも、できたら…
あの黒髪のひ弱な勇者に殺されるのもよかったかもしれない。
目を閉じれば、スッと体が軽くなった気がする。
そして再び目を開けば、
あの黒髪が頬を掠った。
「アーシュ、迎えにきたよ!」
その華奢な体を引っ張ると
力を込めて彼女を抱きしめた。