つよい魔王とよわい勇者
「なんて無様な勇者だ。
俺様を倒す気があるのか?」
雷に怯える勇者のそばに降り立つと
勇者の漆黒の髪の間から
真っ白な肌と大きな瞳が見えた。
「勇者ならば雷になんざ怯えたりはせん。
貴様はひよっこの幼児か?」
魔王は思いの外勇者が美しかったことに
驚きつつも、勇者を奮い立たせるため、
嫌味なことばかりをいう。
しかし勇者はさらに溢れるほどの涙を流し始めた。
それには魔王も少し慌て始めた。
「…何故泣く」
「私…かみなり、…嫌いなのーっ!!!」
しゃがみこみ耳を塞いでいる勇者に
魔王は、はぁ…とため息をつくと
指を鳴らした。
それとともに雲に割れ目ができて光が差し込んで来た。
今までの嵐はどこへ行ったか
すでにあたりは明るく日差しが差し込んでいた。
「…ありがとう、
これで真剣に勝負ができるわ。」
勇者は涙で濡れた頬を袖口で拭うと、
重たそうな剣をふらふらと構える。
もう勝負は見えていた。
どう足掻いても勇者は負ける。
か弱過ぎた。
魔王は勇者を捕まえ、
魔王の城へと連れて行った。