星降る丘でキミを憶う


桜の花が散って代わりに緑の葉が茂る。

俺が好きな時季。

寒さが遠のき、でも暑すぎず、風が吹けば気持ちがいい絶妙な気温。

冬とは違って木には葉が茂り、夏とは違って清々しい風が吹き、秋とは違って何もかもが淡く色づく。

俺は春が好きだ。

桜の時季が過ぎて梅雨がくるまでのほんの僅かな時間。

あっという間に過ぎてしまう今の時季が一番好きだ。

「春といえば桜でしょ」

学校の女子はそう言うけどーあの丘を聖地と言った女子が言っていた、俺にとって春といえば今のこの時季だ。

木々に葉が生い茂り、道端には名前も知らない雑草が花を咲かせ、そして俺が生まれたこの季節。

……ああ、噂をすればなんとやらとはよく言ったものだ。

「はーる!おはよう」

「おはよう」
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