星降る丘でキミを憶う
小学校からの腐れ縁。
十年前からずっと同じ学校に通っている幼馴染。
俺とは価値観の合わないその女は朝からエネルギーに満ちている。
「もうすぐ春の誕生日だよね」
「ああ」
「今年も家で過ごすんですかー?」
その女は、凪は片手をハンドルから離しマイクのようにしてそれを俺に向けてくる。
「そうだな」
「春人さんの春はいつになったらくるんでしょうか?」
女はなんでこう恋愛事にうるさいんだろうか。
「置いてくぞ」
自転車のスピードを少し上げる。
「あ、待ってよー。置いてかれたら愛しの凪ちゃんが泣いちゃうよー」
「愛しくない」
そんなことで凪は泣かない。
分かってる。
分かってるのに、それでも俺は凪のスピードに合わせてしまうんだ。