星降る丘でキミを憶う

「お!いい食べっぷりだね」

こうなったら仕方ない。

早く食べてさっさと出よう。

急いでケーキを押し込みコーヒーで一気に流し込む。

「え?もう行くの?」

シヅキの声を後ろに聞きながら逃げるように店を出た。

「春人待ってよー」

そのすぐ後をシヅキが小走りで駆け寄ってくる。

「時間あるんでしょ。なんでそんなに急ぐの?」

返事をしないで店先に止めていた自転車に鍵を差し込む。

「どこ行くの?」

「乗って」

周りに聞こえないようなるべく声を抑えてシヅキに伝える。

「乗ったよ」

シヅキの声を聞くのと同時にペダルを踏み込んで、いつもは通らない道を進んだ。
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