星降る丘でキミを憶う
「そうよ。朝から喧嘩しないの」
「ごちそうさま。春人、明日はバイトか?」
「そうだよ。午後から」
「じゃあその前に自転車屋に行くか」
「自転車屋?」
「毎日乗ってるだろう。もっと軽いやつのほうがいいんじゃないか?」
「分かった。じゃあそうする」
もっと軽くて、だけど荷台の付いているのを買ってもらおう。
シヅキを乗せたままでも坂道を登れるようなやつ。
明日からはそれで坂道を登りきろう。
そっとソファーの方を見るとシヅキがひらひらと手を振ってにこにこと笑っている。
呑気なもんだ。
シヅキは俺の小さな決意など気づいてもいないんだろう。