星降る丘でキミを憶う

「春兄はなんで彼女作らないの?」

「なんでかな。縁がないからじゃないか?」

「他人事ー。凪ちゃんも言ってたじゃん。春兄は人気あるんだから縁なんていくらでもあるでしょ」

でも本当に縁がなかったんだ。

そもそもつい数日前まで人を好きになるってことが分からなかったんだ。

いまなら人を好きになることがどういうことか分かるけど。

だけどその人はもうこの世にいないんだ。

「彼女ができたら海に会わせてね」

「できたらな」

たぶん、当分できないけど。

「春兄おやすみ」

「ああ、おやすみ」

いつか俺にも彼女ができるんだろうか。

シヅキのことを忘れて、他の人を好きになる日がくるのだろうか。
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