星降る丘でキミを憶う

「そんなところに座ってたら危ないよ」

「そうだね」

『そうだね』その人は確かにそう言ったのに、その声は全くそう思ってないように聞こえた。

「君はこの辺に住んでるの?」

「シヅキ」

「え?」

「私の名前」

「ああ。シヅキはこの辺に住んでるの?」

「分からない」

「分からない?」

「うん。分からない」

「迷子か?」

「うーん……」

考えながらシヅキはまた空を見上げる。

「迷子と言えばそうなんだろうし、違うって言えば違うのかなぁ」

のらりくらりとした口調でーわざわざ考えた意味があるのか、シヅキはそう言った。

「名前は?」

「シヅキ?」

「私じゃなくて。あなたの名前」

「春人」

「はるのひと?」

「そう」

「春人はこの辺に住んでるの?」

「そうだよ」

「そっか……」

シヅキはなぜだかがっくりと肩を落とす。
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