星降る丘でキミを憶う


「おはようございます。初めまして、シヅキです」

靴を履き替えている間。

廊下を歩いている間。

HRが始まるのを待っている間。

俺が挨拶を交わすたびにシヅキはすぐ後ろで自己紹介をしまくった。

他の人に見えていなくて本当に良かったと心から思う。

見えていたら即職員室行きだ。

それでも俺はシヅキが喋るたびにひやっとして、だけどシヅキはそんなこと気づきもしないでどこかの政治家のように自己紹介を繰り返していた。

それは教室に入ると更に加速した。

「昨夜から春人にお世話になってます」

「いつも春人と仲良くしてくれてありがとうございます」

「あ、そのマスコット可愛いね」
< 68 / 332 >

この作品をシェア

pagetop