星降る丘でキミを憶う
「春人はおばさまたちに大人気だったね」
人気というより珍しいだけだろう。
実際あのスーパーで働いている高校生は俺だけだ。
後ろから鼻歌が聞こえる。
何回か聞いたそれは毎回同じものだ。
何か思い入れのある曲なんだろうか?
広い道路を脇道に逸れるといつもの坂道が待ち構えていた。
どうしよう。
いつもは意地になって自転車で登っているその坂道を見ながら考える。
いつもだったら迷うことなくそのまま自転車で登る坂道を、いまはシヅキが乗っているせいで重くなったペダルを漕ぎながらどうしようかと迷う。
降りたくない。
だっていままで毎日登ってきたんだ。
それを今日だけ諦めるなんて、なんだか癪だ。