そのキスで、覚えさせて
「じゃあ、ショッピングしたい。
新しい服が欲しいし、鞄も欲しい。
綺麗な夜景が見える展望台にも行きたいし、観覧車にも乗りたい」
「マジかよ」
遥希は鼻で笑う。
「でもね、これからも時間はいっぱいあるから……」
遥希は手を繋いで歩きながら、あたしを見た。
その視線を感じてどきんとする。
「遥希がゆっくり出来るように、個室で食事が出来る店でご飯を食べて、家に帰る」
「は?それでいいのか?」
遥希はきっと、あきれた顔をしているだろうな。
でも、それでいいんだ。
あたしはこれ以上、疲れた遥希を振り回してはいけない。
遥希の仕事が落ち着いたら、色々付き合ってもらうよ?
あたしは遥希の手をぎゅっと握った。
温かくて大きなその手が、この上なく愛しかった。