そのキスで、覚えさせて
藤井さんの店で楽しい時を過ごしたあたしたちは、満腹で遥希の家に帰る。
「すごいね、遥希!
Fのライブにゲスト出演なんて!」
そう言うと、
「賢一が勝手に言ってるだけだろ」
遥希は吐き捨てる。
そして、じろりとあたしを睨んだ。
「お前はFのことになると、目付きが変わる」
「だって……ファンだもん」
苦し紛れに言うあたし。
Fのファンは簡単にやめられない。
でも、好きなのは遥希。
あたしは遥希の映画、楽しみにしてる。
「お前、見てろよ」
遥希はあたしの手を握る手に力を込める。
あたしの胸が、例外なくきゅんとする。
「俺しか見えないようにしてやる」
何言ってるの。
あたしには、すでに遥希しか見えていない。