そのキスで、覚えさせて
いつもは隣にいて、喧嘩したり、笑ったり、じゃれあったりしている。
そんな彼はスポットライトを浴びて、手が届きそうで届かない場所にいる。
会場から悲鳴が上がった。
泉は泣きそうに歪んだ顔を押さえている。
そしてあたしも、遥希にバレないように俯いた。
俯きながらも気になってしまって。
ちらりと見てしまう。
Tシャツにジーンズ姿の彼は、白色のギターを下げていた。
そして、目の前のマイクを通して語りかける。
「今日は来てくれて、ありがとうございます。
僕が主演させていただく映画の撮影ということで……
今日はライブをさせていただきます」
再び悲鳴。
そして俯くあたし。
俯きながらも、顔は熱くて心臓は止まりそう。