そのキスで、覚えさせて








照明が暗くなり、ステージが青く浮かび上がった。

静寂が訪れる中、あたしの鼓動は最高潮を迎える。

そして……

その手がギターを奏で、スピーカーから音色が溢れる。





少し荒削りで尖っている。

だけど、すごく丁寧で優しい音色だった。

Fの洗練されたあの感じとは違う。

これから花開く蕾のような、ワクワクとハラハラが詰まった演奏だった。





そして、その歌声にも夢中になってしまう。

どこか力強いのに、しっとりと聴かせる歌声。

心の奥にずーんと響いた。

歌が下手ではないことは、TODAYの曲で分かっていた。

だけど今日の遥希は、TODAYの遥希と何となく違って。

まんまとその歌声に乗せられた。

ドキドキして、胸がきゅーんとして、身体が熱くなって。

あたしはステージ中央の遥希に釘付けになっていた。




知らなかった。

遥希もこんなに歌で人を感動させられるなんて!



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