そのキスで、覚えさせて
曲は三曲あった。
ロックらしいアップテンポの曲に、魅せるバラードに、ミドルテンポの曲。
遥希に狂わされ、感動させられ、釘付けにされた。
そんな至福の時間は、あっという間に過ぎ去る。
泉は顔を押さえて泣いていて。
あたしも必死で涙を我慢して、下を向いた。
「三曲とも、あの有名な艶さんが作曲してくださいました。
僕にはこれが精一杯ですが、楽しんでライブ出来ました!」
きっと、遥希はいつものキラキラ笑顔でみんなを見ているんだろう。
そんな遥希なんて見ることが出来ずに、あたしはただただ曲の余韻に浸っていた。