そのキスで、覚えさせて





ここで遥希は口を閉じ、しばらくの間、会場に悲鳴と嗚咽が溢れていた。

泣いているのは泉だけではないようだ。

そしてあたしも、涙を我慢し続ける。

そんなあたしの肩に、なんと瀬川さんが手を置いて。

涙も引っ込んで、びっくりして飛び上がってしまった。



いけない!

遥希に気付かれていないとはいえ、これはいけない!




思わず身を固くした。

その時だった。





「それでは、一つ、ファンの方とのシーンを撮らせていただきます。

僕が選んだ方……ステージに上がってください」




その声に、固まった。




「本当はスタッフが選ぶべきなのですが、僕が選んでいいようなので」



< 133 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop