そのキスで、覚えさせて
ここで遥希は口を閉じ、しばらくの間、会場に悲鳴と嗚咽が溢れていた。
泣いているのは泉だけではないようだ。
そしてあたしも、涙を我慢し続ける。
そんなあたしの肩に、なんと瀬川さんが手を置いて。
涙も引っ込んで、びっくりして飛び上がってしまった。
いけない!
遥希に気付かれていないとはいえ、これはいけない!
思わず身を固くした。
その時だった。
「それでは、一つ、ファンの方とのシーンを撮らせていただきます。
僕が選んだ方……ステージに上がってください」
その声に、固まった。
「本当はスタッフが選ぶべきなのですが、僕が選んでいいようなので」